[厳冬期を迎えるにあたり]足元を見直す

2007/12/20 23:15

 

 さて、産経新聞を愛読している読者の一員として、イザはすばらしい所です。

 紙面に載らない、新聞記者さんの裏話だけでなく、「産経新聞」の読者にはいろんな人がいて、病院での治療についても意見がある方がおみえです。

 自分も時々拝読していますが、「自ら味わった経験」を詳細に説明されておられます。もしもお時間があったら患者さんの声を聞いてあげてください・・・そして感じてあげてください(共感力が僕には足りないのか、つっこんじゃいますが・・・ごめんなさい汗)

出べその親方のブログ

 医者が患者の命を永らへるために最善を尽くすのは過去の話

 この方のように、その時に医療従事者の態度や「今の医療サービス」について不満が出てしまうのは、「疲弊しきった救急医療現場」の裏返しでもあります(奈良県の高崎さんもこの方もまた被害者です>医療崩壊)。

 健康は・・・「失われる」までそのありがたみはわかりません。同じことが医療にも言えるかもしれません。

 国民にとって医療現場が危険になって、「昔は良かった・・・」と言うかもしれませんが、その頃には手遅れのような気もします。

 今の患者さんは情報過多で、気の毒です。病院にいけば、どんどん説明され、検査を受けるように言われ、その結果が「理解」できる間もなく、「決断」を迫られます。決断してあとで「ちょっと待って・・・」はないのです。納得が行かないから、元に戻って・・・というタイミングはたいてい失われています。

 家族が病気を乗り越え、生き残ってほしいという願い。この願いをかなえるのは、簡単なようで、実はそうでもありません。

 自分も経験がありますが、無理な救急処置や延命治療は、「気の毒」な結果を往々にして招いています。

 たとえば、自分の患者さんが自宅で突然心臓が停止しましたが、家族の方は驚いたせいか心臓マッサージの開始が遅れてしまい、救急車で心臓マッサージを受けながら運ばれ、一生懸命に救命しました。
 幸い、低体温療法、PCPS(人工心肺)で助かりました。しかし、患者さんは気の毒なことに心臓は回復しましたが、意識は戻りませんでした。

 「救命」を願った家族の方も、最初の1ヶ月は毎日来てくださいました・・・しかしそのうち1週間に一度か二度となって行きました。自分も患者さんを救って差し上げた・・・なんて言えませんでした。残念ながら、半年の入院期間が終わって、別の療養型病院に転院されていかれました。

 昔と違い、今は医療を受ける患者さん側に、決定権がある時代ですが、結果として、全員が助かるとは限りません。社会復帰が叶えばいいのですが、そうならない場合、家族にとって「残酷な結果」となっています。

 急性期の医師に、これをじっくり説明しても、患者さん側がすべて理解できる訳ではありません。急性期病院で検査漬けにされたとか、薬漬けにされたという「診察内容」に不満が残っている・・・。結局、「心のケア」と、「万が一の時」の説明が不足しているかもしれませんね。

 救急医療を行っていたときに、90過ぎの患者さんや寝たきりの患者さんをどうするか?といった問題と常に悩んでいました。
また、元気な方で歩いてこられた方でも救いきれないことはあります。医療現場で、ぎりぎりかつかつの医療サイドの状況を「いきなり理解」できるほど、精神的な余裕もまた理解できるゆとりもありません。

 これからやってくる、「医療・冬の時代」の前に、患者さんは「Sikkoのような未来の姿」を知ろうとしりませんし、それを受け入れるだけの覚悟が足りません。

 また、自分の受けている「現在の医療」に、リソース(お金やマンパワー)を補充しないで、もっと・・・改善してほしいという・・・無茶な要求を呑むのは困難です。

 サービス業であれば、価格相応となると、世界でも破格の安さの医療費では「これが限界」だというのは、やはり市場化されて始めて明らかになるように思います。

 救急医療、産科医療、そして外科診療・・・すべて「限界」が近づいています。


 今までこれを上手にお役人が切り分け、配分をしていましたが、ゆがみが残っており、年々さらにゆがみが酷くなってしまいました(地域格差、労働時間、待遇など)。これを、なおすには、結局、「市場原理」にゆだねるしかないのでしょう。しかし、その時に良くなるのは「一部のブランド病院に受診できる患者さん」だけでしょう。つまり、「収入の多寡が、診療サービスを左右する」ことに。

 これから、病院がどんどんつぶれ、患者さんが溢れてしまえば、病院ベッドに余裕がなくなります。すると大阪の「病院」のように、行き場を失った患者さんがどんどん増えるようになります。

昔、バブル経済で「わが世の春」を謳歌した銀行が、破産したり、次々と再編して生き残るしかなかった日本の金融機関のように、市場原理という新しいパラダイムへシフトし、医療再生ファンドという仮面をかぶった「利潤にうるさいハイエナ」がやってきて、上手に取り込まれるでしょう。

これに立ち向かうには、患者さんも国民も、そしてマスコミも「医療」に過度の期待を求めることは、逆に今の制度を痛めつける可能性が高いということを認識せねばなりません。

「姫路」の事件については、「新小児科医のつぶやき」で2007-12-20 姫路宣言の真相」詳しい検証がされていますが、マスコミも全貌がわからないまま、結局、「中途半端」な報道です。

 日本の医療は、医師会ものでもありませんし、病院のものでもないです。そしてお役人ものでもありません。国民のために存在しています。

 しかし、アメリカのような市場原理主義がやってきたら、大半の患者さんにとって、利用しにくい状況になるでしょう。十分な医療を受けられないというはた迷惑な制度ですが、もうすぐやってきます。

 日本では、今のところ医療費の抑制で、まだ患者さんがそれほど困ってないのは幸いなことです。将来的な見通しがないまま、 混合診療へと暴走するよりはいいのかもしれませんが、これから1年、2年の間に「国民」に啓蒙する努力が必要でしょう。

 政治家の方や政府の官僚さんたちは、変わり身が早いです。また、困りません。旧来の日本医師会に期待できるとしたら、「国民」を味方につけることですが・・・国民にとって医療のことを理解してもらうには、かなりの時間と努力を要します。

また、風邪くらいしか病気にまずならない若者にとって、保険診療の恩恵など思いもよりません。こういった層にどれだけ「理解」してもらえるか?それが結局、次の新しい医療保険制度の出来につながるでしょう。ぽち

  なかのひと 



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診療報酬改定‐各団体の反応

薬事日報 2007/12/20

日医‐「流れ止められなかった」 
日本医師会の唐澤{示+羊}人会長は、診療報酬の改定率が決定したことを受けて会内で記者会見し、全体で0.82%引き下げとなったことを挙げ、「マイナス改定の流れを押しとどめることができなかったことは大変残念」と語った。

  日医は5.7%の引き上げを求めてきたが、今回の改定は、勤務医や地域医療の疲弊への配慮があったものの、医科本体は0.42%の引き上げにとどまっ た。その点について「決して十分とはいえない」としつつも、「勤務医師の疲弊、産科医療・小児医療・救急医療の危機を少しでも救うであろうことに期待した い」と述べた。 

  その上で、疲弊する医療を改善していくには、「新しい財源の枠組みがないと達成できないと聞き及んでいる」と述べ、財政的な手当も含め医療環境に改善の必要性を国に理解を求めていく姿勢を示した。

 今回の本体引き上げの裏で、政府管掌健康保険に対する国家負担削減分を、組合健康保険などが1000億円肩代わりし、サラリーマンの負担 増で医師の報酬を増やしたとの批判があることには、「大変大きな負担をかけることになり、ムダのないよう国民の医療に役立てたい。その意味で大変感謝している」と話した。

■日病協‐「受け入れがたい」

日本病院会など11病院団体で構成する日本病院団体協議会は、2008年度診療報酬改定で本体部分がプラス0.38% となったことについて、「受け入れがたい」との見解を発表した。鮫島健議長(日本精神科病院協会会長)は、金額に換算して300億円程度の増額では、医療 現場の崩壊を阻止することは難しく「納得できない」と述べた。日病協の斉藤寿一実務者会議委員長も、「病院医療の崩壊を救うには程遠い数字」と強調した。

  鮫島議長は、「財源確保のための努力に対しては、それなりの評価をするし、感謝している」とする一方、「(引き上げ幅の低さにより)結果として医療が荒廃した場合の責任は国にある」と述べた。 

  日病協が7日に厚労省に提出した08年度診療報酬改定では、医療現場の崩壊状態を緊急的に回避するためには、06年度改定の下げ幅であるマイナス 3.16%を戻すだけの上げ幅が不可欠との観点から、あえて数字は示さず病院関連の報酬を「大幅に引き上げる」ことを求めていた。 

  斉藤委員長は、「そういう観点からすると、1%以下という数字は医療を軽視していると言わざるを得ない」と述べた。 

  また、08年度診療報酬改定の要望書で、「中核」と位置づけた入院基本料と手術料の引き上げについては、「どう引き上げられるかに注目している」とした。 

  日本病院会の山本修三会長は、約300億円の増額について、「この程度のものを病院と診療所が取り合うような愚はしたくない」とした上で、今後の点数配分の議論については、日病協と日本医師会が互いに話し合い、「うまくやっていく必要がある」と述べた。

■健保連‐「引き上げ情況にない」   健康保険組合連合会は、診療報酬改定率の決定を受けてのコメントは出していないが、以前から「引き上げの環境にはな く、医療の歪みやムダの是正が重要。組合健保や共済組合による政管健保支援の財源が診療報酬引き上げ財源となるようなことがあってはならない」との意見を 表明してきている。

  これは反対してきた政管健保支援を受けることを14日に決めた際、政府・与党に対する要望として出したもの。その時に記者会見した対馬忠明専務理事は、引き上げに使われることがあれば「憤りに近い感情はある」と語っていた。 

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コメント(7)

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2007/12/21 00:24

Commented by rym64281 さん

医師の団体に政治的パワーがないことが、医師(特に勤務医)がなめられている理由の一つでしょう。
国会の政治家にも臨床経験豊かな臨床医議員が少ない。
臨床医は医師のキャリアを捨ててまで、政治家になろうとは普通は思わないから。
マレーシアのマハティール首相や、ノルウェーの女性首相(小児科医)みたいな臨床医出身は稀。アメリカでもオレゴン州のキッツハバー知事(救命救急医)みたいな医師出身の政治家も稀。

特に日本の医籍登録医師の3分の2を占める病院勤務医の意見が殆ど無視されてきた。
日本医師会は個人診療所の開業医が中心で、医師全体の3分の1くらいしか代表していない。
日本病院協会、自治体病院協会、など病院の団体もあるにはあるが、政治的パワーとなるといまひとつ。
しかも、厚生省の審議会には意見を聴取されるだけ。
でも、今の日本の医療行政をみると、絶対に勤務医には政治的パワーが必要。
医療行政に関係する省庁役人や、政府関係の会議のメンバー、マスコミの大多数が、医療システムに全くの無知。
知らないんなら口出すな、と言いたい。
そういう連中をのさばらせてきた医者も悪いけど。
そんな奴らに、医療制度なんか任せていられない、と思って行動に移っている臨床医も少なからず出てきた。

ドイツの医師会は強制加盟です。各州の医師会の力が強くて、日本より医療政策に意見を反映できる。勤務医の影響力も日本よりは強い。
イギリスの医師会(BMA)も強い。いわゆるかかりつけ医(GP)から病院勤務専門医(Hospital consultant)、医学生、日本で言う研修医(Junior Doctor)、イギリスでトレーニングを受ける外国人医師まで医師全体を網羅する各種の委員会があって、イギリス保健省への影響力は日本より強い。
オランダやフランスの病院勤務医団体も強い。
日本じゃ、医師の多数派を占める病院勤務医がないがしろにされてきた経緯がある。
今度、日本にも新年早々、勤務医を中心とした新医師連盟が設立されるようですが。うまく機能すると良いです。

 
 

2007/12/21 01:39

Commented by rym64281 さん

skyteam先生。
これは愚問ですが。
決してからかっているわけでもなく、非難しているわけでもないのご容赦を。

産経新聞なんか読んでて、面白いですか。
わたしの周囲の医者で自宅で産経新聞を購読する医者はいません。
いちおう、病院勤務医です。
病院にも朝日と読売と週刊医学界新聞しか置いてありません。
産経新聞なんて格落ちする2新聞とずっと以前から思っておりましたし、
立大医学部や東大・京大理系レベルの学歴・偏差値の記者なんていないだろうから(朝日には多いです)、知的レベルの落ちる新聞だと思います。
産経の医療記事に疑問符がつくのは記者の元々の知的レベルの低さが原因ですので、
仕方ないのではと思います。
m3などの医療ブログでも、産経の医療記事を取り上げて非難するコメントが多いです。

また、いまの医療行政も文系出身者が口を挟んでくる、または臨床経験ゼロの医系役人が現状認識からはずれた政策をとることが、問題を大きくしています。

先生のブログは図表も多くて、一般人にはわかりやすいですが、一般人らしき書き込みは、折角の先生の図表つきの説明を全く読んでいないかのように受け取れます。

m3にはブログは作られないのですか?(僭越ながら)
そのほうが良いように思えます。
ここでの先生の努力も、一般人からの書き込みを読むと、徒労なようでかわいそうになります。

 
 

2007/12/21 01:42

Commented by rym64281 さん

skyteam先生。
延命治療については、普段の実践をでべそ親方のブログに書き込ませていただきました。
むしろ、一般人の患者・家族に受けた医療に対する誤解を解くほうが大事かと思います。

 
 

2007/12/21 02:27

Commented by skyteam さん

rym64281先生>
 えっと「産経新聞」を購読はしていません。医療捏造報道の情報源(ネタ元)として「愛読」なのです・・・汗。前は何か調べ物か何かで電子版の契約してた覚えがあるのですが、「妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち」の社説掲載で翌日、抗議の電話を行い、ただちに契約を破棄しました。
 というか、産経新聞を自分も医局で読んだ覚えは一切ありません。ただ、色んな人の意見が読めるという意味では、「イザ」は貴重だと思っています。いわゆる「社会に向けた病院の窓」のように感じています。m3.comは以前、お借りしてたのですが、やはり医師だけが集まる場所には、医療に興味がない人は足を運びません。
 産経さんにはある意味感謝しているのです・・・いわゆる「医療の情報格差」ある人たちとの交流の場を提供していただいているので。

 
 

2007/12/21 04:37

Commented by ssd666 さん

しかし、「医療崩壊」で、一番被害を受けるのは産経の愛読者層でしょう。

今では、世界的に見て、庶民が高度な医療の恩恵を受けられています。(世界のどこで、庶民が躊躇無くグリベックやアバスティンが使える国があるでしょうか)

しかし、混合診療や、民間保険主体になれば、年収1000万円以上の層は民間保険によって、今と同じレベルを維持。
生活保護レベルの人は、給付の割合が下げられるにせよ、振幅が少ない。
一気にどん底に陥れられるのが、マスとして大きい、働いている庶民クラス
これはワーキングプアなんてレベルではなくて、ふつうの年収400-800万クラスの「中流」まで含まれます。まさにSIckoの世界。

これは、「いかに企業や国の支出する医療費を下げるか」という観点からすれば、ごくごく簡単な推測です。
最大多数の最大不幸を実現するのが、利益の最大化なのです。

 
 

2007/12/21 20:20

Commented by murdochslim さん

団塊の世代が寿命を迎えるころ年間の死亡者が現在の100万人から、20年後に150-170万人になると言われている。財務省は、死亡者が増えても総額は変えない、すなわち高齢者1人あたりの医療費を3分の2にするといっているのです。こんなことは医師にとってはもう常識ですが、医師以外で理解している人はほとんどいない。本当の狙いは今の高齢者ではなく、今50台、60台の人、どんなに会社で威張っていても定年退職したらただの人です。国の財政のためなら彼らが70,80になったときに税金や保険料から医療費を払うのはけしからんといっているのが財務省経団連、産経、日経。困るのは医師ではありません。

 
 

2007/12/21 21:05

Commented by  さん

誠にご愁傷様です、団塊の世代はもとより±10年ほどの方々。私の世代も含む(w

産経如きのふ抜けはもちろんssd666さんの言うように中間層みんなだめでしょ。そんな国だと脱力しましょ。

その先の100年を考える人を育てることですかな。それまでの人柱を立てる、あるいは立つ。
くにに、植林もなく間伐もないことと同じでんがな。ああ、Gucci。

 
 
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☆ 可笑しな内閣。